作品
最初からやり直したい(現パロ)
何をしていると問いかけることの無駄さは随分前から知っていた筈だがそれでも口にせざるを得なかったのは、真白の装いが常であるはずの保護者がなぜか赤く染まっていたからだ。トマト缶が爆発したとけろりという彼に拳骨を一つ落として、この、絶対に何かをやらかすとわかっていたからこそ呼んでおいたはずの男の姿が見えないことを問えば、やはりけろりと追い返したと言う。
「誕生日プレゼントはまごころがいいのだろう?」
大昔、幼いこどもによこすにしてはあまりにも高価なものをポンと差し出した彼にそう言って贈り物を拒否したのは確かに過去の自分で、今でもあの判断は間違っていなかったのだと思う一方で、毎年己のために何かしてくれようとするたびにこうして後始末が大変なことを律儀にやらかしてくれる瞬間に立ち会うたびに、素直にあの持て余すプレゼントを受け取っておくか、真心などと覚えたてのあやふやなものいいではなく、おめでとうの言葉だけでいいとはっきり言っておくべきだった、と思うのだ。
- 2015/03/29 (日)
- 140字