作品
意趣返しをしたかっただけと彼はいい、
忘れ物を最寄り駅まで持ってきてくれないかと同居人から連絡が入ったのは、彼が出かけた時間から逆算するとちょうど電車に乗った頃合いのことだった。わざわざ戻ってくるほどのものなんて財布かと確認したら、財布も忘れていた事が発覚した。昨今、財布の一つやふたつを忘れてもなんとかなるとはいえ、暑さで脳みそが茹だり始めているのかもしれない。
頼まれものを探しに普段は滅多に入ることのない彼の部屋に踏み入れば、珍しくも雑然としていて、ここ最近の忙しさが伺い知れる。床にこそ何も落ちてはいないものの、ベッドには服が何枚か放ってあるし、デスクにも分厚い参考書が積み上がっている。
学生が紙の山に埋もれるのは理系も文系も関係ないらしい。いちいちすべてを持ち歩いていられないからとその参考書を同学年の有志で集まって自炊したとは聞いたが、そのデータを入れたタブレットを忘れたのでは意味はないなと本の山に埋もれるように充電ケーブルに繋がれていた薄い板を手にとる。
しかし、忘れただけあって財布の方が簡単には見つからず、最終的にベッドの上、服の下という大変に分かりづらいところから出てきたころには、汗だくになっていた。
軽い捜し物のつもりだったからエアコンのスイッチも入れておらず、遮光カーテンが引いてあるままとはいえ、日当たりのいい部屋の室温は相応に高くて、先程まで自室で冷風に浸かっていた体には酷だったようだ。
「猫殺しくんめ……」
財布を隠蔽していた三毛猫の毛皮を模した柄のタンクトップが手の中でぐしゃりと皺を寄せた。
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うすぼんやり考えてた現パロの設定のような。
南泉は医学生。長義はとくに決めてない……文Ⅰで進路迷っててもいいけどそうすると年齢があわないんだな。
- 2019/08/13 (火)
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