作品
蛇足の蛇足(審神者付き)
「……ありがとうございますあるじ……」
朝食もおわるころ、鯰尾藤四郎、物吉貞宗、後藤藤四郎は揃って審神者の執務室へと呼ばれていた。部屋には他に近侍の明石国行といつものおまけの一期一振もいる。
「南泉が寝てる部屋以外に山姥切長義が寄り付かない部屋ってここしか思いつかなくて……ほとぼり冷めないと思うけどちょっとでも英気養っていって」
「あれ? 事情きかれるんじゃないんですか、僕たち」
明らかに、南泉一文字がどこにいるのかを理解している発言に、鯰尾藤四郎が首を傾げる。
「俺はたぶん、この件に関してはうちのほかの誰より詳しいので」
「普段から南泉の部屋にいりびったっとりますもんなあ」
「え、どうやって」
「普通に、訪ねて」
「ふつう」
「遠くて通うという発想がそもそもなかったぜ」
「後藤と違ってボクと鯰尾は、建屋はおんなじなんですけどねえ」
「犬騒動のときに通ってた習慣が抜けなくてつい……誰も来ないし日当たりいいし居心地よくて。猫もいるし。部屋にいるだけならまっぷたつじゃないし」
「ああ、そういえばあの頃、南泉が煮干しの消費が激しくて困るって言ってました」
「それ聞いた山姥切が定期購入始めちゃって、南泉が頭抱えてた」
「話戻してもいいです? 事情は俺たちが聞いてもいいものですか?」
「うーん。本人が言ってるようなものだからいいかな。南泉は山姥切長義がそばに居ると寝かせてもらえないんだよね。絶対に起こされるんだって」
「は?」
「山姥切長義が寝てても、南泉が寝てるのに気付いたらすぐ目を覚まして叩き起こすらしい」
「ええー。山姥切、そんなに横暴でしたっけ?」
「どっちかというと、南泉が許容してるっぽいほうが驚きでは?」
「というか、やっぱり山姥切、南泉の部屋に自由に入れるんですね」
「あっそれ思った。南泉の鍵設定厳しそうなのに」
「山姥切も不法侵入しそうにないけど……でも南泉相手だからなあ……」
「でもその南泉相手でも流石に徹夜明け叩き起こすのは罪悪感あるんだなって思いました。殺気怖かった」
「でも起こしちゃうんですね……」
「誰にでもままならないものはあるよ。仕方がない。だから南泉も怒らないんだよ」
「そういえばそうですね」
「世話焼かせてましたもんね」
「あの二振りが万が一、喧嘩始めたら主にはいい胃薬を薬研に見繕ってもらおうな」
「待って」
「人の体を得て初めて、あの時の感覚はこれだなって思ったのが胃痛でしたね」
「あ、物吉も? いっそいつもみたいに切り合って終わってくれればいいのにね……」
「噂したら影っていうしやめようぜ……」
「ところでどういう流れでこんな話きけたんです?」
「そのへんはプライバシーなので黙秘します」
*この審神者はお家の事情の関係で長義さんに苦手意識があります。和解はずっとしようとしているけど毎度毎度タイミングが悪い。長義さんもわかっているので普段は自分からは近づかない。
*入らなかったけど南泉が逃げ込んでいるのは、その審神者の私物であるグランドピアノおいてあるピアノ部屋。
- 2019/09/18 (水)
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