作品
いと い しといふこ ろ
このところ、南泉一文字が起きている時間は頓に減っていた。日のあたりの良い縁側でも、体を冷やしてしまう庭の木の下でも、どこででもすうと眠り込んでいる。
龍脈穴の隙間から遡行軍が滲み出してくるときだけは誰よりも早く目を覚ますけれど、素早く敵を真っ二つにしては、またすぐに意識を落としてしまう。
無理が来ているのだと白山吉光は言った。刀剣男士という機構に収まらぬ何かを南泉一文字が抱え続けた代償なのだとも。
故こそは知らねども、いつの日か、彼が先にその生命を散らす事は知っていた。まだ幼くて、己がどういう生き物なのかも知らぬ頃からずっとその時が怖かった。
その恐怖を面と向かって告げたことこそないものの、たとえ口にしても頑是ないこどもをあしらうようにすげなくされておしまいだということはわかっていた。
だとしても口にしておくべきではあったのだと、塵の一つも残さず消えたのを目の当たりにして膝をつく。
形あるものは何一つ残らなかった。
彼に育てられたはずの山姥切長義の中にさえ、何一つ。
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- 2020/04/20 (月)
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