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20141118
小夜曲 第五番 01. 薔薇の花、ひとつ
 それはお前のための花だ、とミコトは言った。本当なら一本だけではなく、束ねられてわたしの手元にくるはずだったのだと。包装もされていない赤い花。

 ドライフラワーにしよか、とイズモは言った。それはたしかに最後にわたしに贈り物として残されたものなのだからと。お祝いのための赤い花。

 他の人には言わないでね、とタタラは言った。わたしが最初にあの人に贈ってしまった未来を怒ることなく、自分も考えたことがあったと。残されたものはわたしのものであってわたしのものではない、赤い花。

 だから、わたしは花を焼いて彼に返すのだ。なじってほしかった自分のために。
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