拾い物は交番に届けましょう(燭一) 02
腹の探り合いは、もっと上の、この地表ではない空の上で、行われている。
「起き上がっても?」
「構わないよ」
軽い承諾に腕の力も使って上半身を起こせば、手を貸さなかったくせにすかさず背中へと支えになるようなクッションが差し込まれた。
「……ありがとうございます」
「どういたしまして。コールはしたから工匠もそのうち来るよ」
そう告げて隻眼の男が口の端を緩やかに吊り上げる。雰囲気を和らげようとしているのだろうが、目の色が一切変わらないせいで余計に妙な凄みがあった。鶴丸国永がここにいるのならばもっとうまく取り繕えそうなものなのに、どうしようもなく下手だなと思う。こどものなりでなく、それなりに歳を重ねた姿を持っている以上、長く在るのだろうし、作られた頃合いが古ければ古いほど人の含有率は高いはずだった。
己はそうして刀剣男士になったひとりであるし、知己である鶴丸国永もまたそうだ。希少性が高く、レアランクは上から二つ目でもある。それですら打ち捨てられるところであったのに、と考えてふと思い出した。
「鶴丸国永は…… 」
「ああ、知り合いなんだって? あの人今は内番で畑にいるよ」
「はたけ……」
「うちは中央からちょっとあるからね。食料の自給自足率、高いんだ」